プレス金型の組立や分解に関わる調整内容は、各企業で細かな設計条件などに違いがあることから情報がほとんどないのが現状です。ここでは、プレス金型の組立・分解作業を効率良く行うためのポイントを紹介します。
金型を部品の集合体として捉えることが大切です。金型を構成する個々の部品が設計で指定された通りの精度に作られていれば、基本的には組立に問題は生じません。しかし、実際は組み立てる際に入れ子が傾き圧入がうまくいかず、穴の側面を傷つける可能性が考えられます。
このような場合は微調整して、組み立てやすい形状や寸法精度を構築する必要があります。例として、圧入が上手くいかないことへの対策には、組み込み導入部として0.01mmほど周囲に段をつけるといった対策が有効です。
組立を効率良くするためには、組立環境の整備が不可欠。4メートル四方の作業スペース内で作業が完結できるよう、手元に使う道具を揃えておくといいでしょう。作業動線を考慮して効率性の高いレイアウトを検討してください。
また、組立前には、手仕上げ加工や部品寸法の確認・修正、途中まで組み上げた状態での部品間の寸法確認など、準備が大切。確認と準備がきちんとできていれば、何度も組んだりバラしたりといった手戻りが少なく、効率の良い組立作業が可能です。
プレス金型を分解する際、圧入した入れ子を抜き取りやすくするには、タップ加工がポイント。タップ加工は入れ子固定用のボルト穴にタップを切っておき、入れ子を抜くときにタップにボルトを立ててから引き抜くという方法です。入れ子の固定ボルトがM4の場合、穴径は4.3mm程度ですが、そこにM5のタップ加工をしておきます。
ボルトを使って固定する方法です。ボルト締めはトルクレンチを使いながら狭い機内で作業することになるため、手間と時間がかかります。締め付けが不足している、またはオーバーしているとボルトの緩みや破損を招きやすく、重大な事故の原因になるので要注意。経験や勘に頼らず、トルクレンチを使った正確なトルク管理が望ましいとされています。
また、繊細な金型だと、ボルト締め付け時の歪みにより動作や成形品の品質に影響が出る場合があります。歪みによる影響を最小限に抑えるには、金型設計で定められている歪みが考慮された取付位置にボルトを固定しましょう。
油圧を利用して金型を固定する方法です。圧縮空気や一般的な電動機によって油圧を発生させることで、クランプやダイリフタが作動する仕組みになっています。
従来はボルト締めが一般的な固定方法でしたが、金型交換に時間のかかるボルト締めは多品種少量生産には向かないことから、現在では固定法にボルト締めを選択する現場は多くありません。プレス機を新たに導入する際は、段取り時間の大幅な短縮で多品種少量生産に対応できる油圧クランプを採用するケースが増えています。
2種類の強力な永久磁石を使って金型を吸着・固定する方法です。ボタン操作ひとつで金型を瞬時に固定できるのが特徴で、時間のかかる金型交換を素早く行うことが可能。通電するのはオン・オフ時だけなので、固定中に電力を消費せず、停電が発生しても金型が落下する心配はありません。
また、マグネットクランプは金型のサイズを統一する必要がなく、成形機盤面を最大限活用できるため、金型をより自由に設計できるメリットがあります。
使用するキャップボルトやノックピンのサイズをできるだけ統一することで、組立・分解がしやすくなります。ノックピンのサイズがいくつもあると、それだけで準備が大変です。さらに間違えないよう慎重に組み立てる必要が生じ、時間がかかります。
フールプルーフもミスのない組み立て・分解には欠かせません。方向に注意して組立てる設計ではなく、どう作業してもひとつの方向にしか組めないように設計しておけば、ミスが起こる可能性は下がります。
たとえば長方形の部品であれば、どこかひとつの角に面を取ることで自然と方向が決まり、考えることなく作業が行えます。
人為的なミスがなるべく起こらないように設計することも、打ち合わせ段階で提案してくれる業者へ依頼するのが良いでしょう。
同一形状の部品を均一に量産できるため、生産効率を向上させることができるプレス金型。
高度な技術が必要とされ、依頼する金型メーカーによって制作・量産にかかる期間や品質が異なります。
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