金型製作における設備の重要性
プレス金型の品質を確保するためには、金型の製作設備に注意を払う必要があります。なぜなら、プレス金型の品質の良し悪しは、設備状況に左右されるからです。どういうことか詳しく説明しますので、最後までチェックしてみてください。
品質の良い金型製作に設備が重要な理由
品質の良いプレス金型を導入したいと思うなら、そのための製作設備を充実させる必要があります。製作設備が充実しているほど、設計や加工精度を高めることができ、結果的に最終製品の品質を向上できるからです。
金型を製作するための設備には、マシニングセンタ、NC旋盤、ワイヤーカット、CNCプロファイルグラインダ、放電加工機など様々な種類があります。これら設備の充実を図ることで、品質の良い金型製作が可能になります。
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金型は製作設備によって品質が左右される
金型の品質は、ひとえに製作設備によって左右されます。
例えば、金型設計用のCAD/CAMがなければ、要求品質を満たすデザインや形状の金型を設計することができません。また、マシニングセンターがない場合、一定以上の寸法精度を実装するのは不可能です。他にも、NC旋盤、ワイヤーカット、放電加工機など各種設備が整うことにより、様々な金型をオーダー通りに製作することができます。
製作設備を充実させることで、バリの発生や折れなど不良・不具合を最小限にし、要求品質を確保して所望の金型を得ることができるのです。また、工程でトラブルが発生した場合に、迅速に対応し修復するためにも、製作設備を充実させることは重要です。
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設備が揃っていれば幅広い要望に対応可能
一口に金型を製作するための設備といっても、マシニングセンタ、NCフライス盤、ワイヤーカット、3次元CAD/CAMなど様々な種類があります。しかもそれぞれの種類によって役割が異なり、対応できる範囲も違います。
従って、より多くの機械や工具を揃え、設備体制が充実しているほど、様々な金型を作成することができ、幅広い要望に対応可能です。デザインや寸法はもちろんのこと、バリや折れなど不良を少なくすることもできるでしょう。
逆に、設備が不十分だと対応できる範囲が限られてしまうので、幅広いに要望に応えることができません。この点でも、金型製作における設備の充実度は重要です。
金型製作に使われる設備
マシニングセンタ
切削加工で用いられるNC工作機械のことです。NCによる自動制御と自動工具交換装置によって24時間無人で稼働できます。自動パレット交換・回転テーブルと組み合わせることによってより複雑な加工も可能です。
またマシニングセンタはNCフライス盤・NCボール盤を活用した「切削加工」を一つにまとめたもので、複数の刃物を交換し、使い分けることによって様々な切削加工が可能です。NCプログラムが搭載されており、刃物の位置・回転速度などが自動で制御されています。
マシニングセンタの種類
- 立形マシニングセンタ
刃物の回転軸が縦向きのマシニングセンタで、金属の上部から刃を当てて切削加工を行います。加工テーブルの部分が広いため、1面加工が多く採用される金型加工に最適です。非常にコンパクトでもあるので、小・中物の加工で幅広く活用されています。
- 横形マシニングセンタ
刃物の回転軸が横向きのマシニングセンタで、漢族の側面部分から刃物を当て、切削加工を行います。金属の側面部分を加工するため、箱型などの立体的な加工に最適です。立体マシニングセンタより取り換えの頻度も少なく、位置がずれることでの加工精度が劣ることもほとんどありません。また複数の加工ワークを取り付ければ、同時に加工を行うことも可能です。
- 門形マシニングセンタ
刃物の回転軸が縦向きになったマシニングセンタのことを指します。比較的大きなタイプが多く、回転軸の部分を支える構造の形が「門」の形状になっているのが特徴です。作業するスペースが広いため、発電機タービンやプロペラなど大きな金属の重切削に最適。ただ重量バランスによっては傾きに注意が必要です。
- 小型マシニングセンタ
タレット式の旋回式工具交換装置(ATC)と30番の主軸が搭載している小型のマシニングセンタのことです。穴あけ加工機として開発され、その後は高精度・高速化が図られ、周辺機器が更に進化したことで小型のマシニングセンタとして用いられるようになりました。今では電子部品などの金型加工をはじめ、スマホ本体の加工する機械として幅広く活用されています。
- 微細加工機
マシニングセンタの精度を最大限まで椎弓した超精密加工機のことです。ミクロン・サブミクロンの加工精度を高めることができ、精密レンズ・光学金型などの微細加工の分野で幅広く用いられています。
- 5面加工機
旋回工具も付いた門形マシニングセンタのことです。工具の角度を調整することでワークの側面と上面のトータル5面の加工を行えます。1階だけの段取りで済むので、ワークを交換する際の位置ずれも起こりにくく、加工精度も高まるでしょう。複雑な部品の加工や大型金型加工などに最適です。
- 5軸加工機(5軸マシニングセンタ)
従来の3軸加工に、旋回軸を加えた5軸のマシニングセンタのことです。従来の3軸加工では不可能だった3次元曲面の加工をはじめ、アンダーカットの加工もできるように。航空機の内部プロペラなどの滑らかな曲面時の加工に用いられることが多いでしょう。
- 複合加工機(ターニングセンタ)
NC旋盤を基本とし、マシニングセンタの機能を一つにまとめた複合加工機のことです。従来のマシニングセンタのフライス加工に、ワーク回転による旋削加工もプラスしています。交換式の旋回工具を搭載したことで、5軸の加工にも対応できるように。
- ツインスピンドルマシニングセンタ
主軸を2基搭載したマシニングセンタのことです。2個のワークを1サイクルで同時に加工することが可能で、生産性を格段にアップできるでしょう。スマートフォン部品など小型ワーク加工のラインなら、4基以上の種々児を搭載したマルチスピンドルフライス盤なども用いられています。
- グラインディングセンタ
マシニングセンタを基本とし、NC研削盤の機能をひとつにまとめた複合加工機のことです。従来のマシニングセンタでの切削加工だけでなく、砥石を用いた研削加工ができるように。たとえばダイヤモンド砥石・CBN砥石などの超砥粒ホイールで、高硬度の金属を加工することも可能です。
- ライン対応型マシニングセンタ
FTL・FMSなどの専用ラインで活用されるマシニングセンタのことです。専用加工機の一つとして、大量生産加工ラインに組み込まれるような使い方をされます。加工テーブルが固定されており、機械を覆うカバーもありません。従来のNC専用機よりも高い汎用性があり、加工内容よりも柔軟性が高くなっているでしょう。
- CNC歯科用ミリングマシン
歯科技工の分野で用いられる小型のマシニングセンタのことです。小径ツールを自動で交換し、歯型・義歯などを自動で削り出すことができます。
マシニングセンタのATC (自動工具交換装置)とは?
Auto Tool Changerの略で、切削プログラムに応じて自動でツール交換を行いながら加工していきます。長時間の連続運転を行う際に欠かせない装置のひとつです。刃物台の部分が回転しツール交換する旋回式の「タブレット式ATC」と、チェンジアームを用いてツールマガジンに収めた工具を主軸に換装する「マガジン式ATC」の2種類があります。さらにツールマガジンにはドラム式・チェーン式・マトリックス式に分類。
ATCの交換時期はTool to Tool(ツール・ツー・ツール)・Cut to Cut(カット・ツー・カット)・Chip to Chip(チップ・ツー・チップ)の3つの指標が活用されます。
治具
マシニングセンタのワークを固定させるためには、治具が必要不可欠です。加工に適した治具で固定することで、ワークの位置決めや平行だしなどの精度が高められるでしょう。また作業者の段取りの際のばらつきもほとんどなく、作業効率アップにもつながります。加工の自動化が進むことで、加工の精度や作業効率を高めるための重要な装置です。
治具は大きく分けて、さまざまな用途で活用できる「汎用治具」と、加工の内容に応じて専用設計された「専用治具」の2種類があります。
- 汎用治具
一般的に市販している治具のことです。マシニングセンタだけでなく、様々なNC工作機械の加工ワーク固定に用いられています。コストが抑えられ、単発加工に最適ですが、取り付けるためには高いスキルが必要です。マシンバイス・クランプ・イケール・チャックジグ・ベースプレートなどがあります。
- 専用治具
特定の加工を行うために設計された専用の治具のことです。精度が非常に高く、取り付けも非常に容易なので熟練は必要ありません。機械の自動化に対応することもでき、量産加工にも最適ですが、コストがかかってしまうというデメリットも。
各種研削盤
検索加工で幅広く活用されている工作機械です。回転砥石によって徐々に加工ワークに押し当てて、表面を削る研削加工に欠かせない工作機械で、削るのが難しい切断から鍛造品のバリ取りに至るまで様々なケースで用いられています。一般的な工作機械より高い精度があり、加工の内容などによって機種が30以上もラインナップ。
研削盤の種類
- CNC平面研削盤と「平面研削」
平面研削で用いられる研削盤のことです。テーブルにワークを固定し、左右に動かしつつ回転砥石を押し当て、ワークの平面を仕上げていきます。高い平行度が必要となる機械部品の研磨、半導体ウエハーの加工など、様々な研削で活用されているようです。
- CNC円筒研削盤と「円筒研削」
円筒研削で用いられる研削盤のことです。回転するワークに回転砥石を押し当てながら、丸ものの外面を仕上げていきます。自動車のシャフト・産業機械の軸部品の仕上げなどで一般的には用いられているでしょう。また専用の超仕上げユニットを活用することで、超仕上げにも対応可能です。
- CNC内面研削盤と「内面研削」
内面研削時に用いられる研削盤です。回転するワークの穴に砥石を挿入し、押し当てながら内面を研削していきます。ベアリング・軸受けなど内径仕上げに用いられることがほとんどです。ワーク自体を回転させることが困難な場合にはプラネタリー方式を使用することも。またオシレーション機構が備わった機種なら、内面の精度を高めた仕上がりが行えます。
- CNC心なし研削盤と「心なし研削」(センタレス研削)
支持ブレード・調整砥石・研削砥石の3つで支え、丸ものワークの外面を研削するものです。ワークを固定するためのセンサを用いないため、小型のピン・噴射バルブなどの自動車部品の量産加工で用いられることが多いでしょう。連続加工・自動化にも対応可能です。
- CNC成形研削盤
成型研削で用いられる研削盤のことです。歯車・ネジなどの専用部品の研削で活用されます。成型する部品によって、ねじ研削盤・歯車研削盤・クランク軸研削盤・カム研削盤・スプライン軸研削盤など種類が豊富です。
- CNC工具研削盤
ドリルなど加工・研削を行う工具研削で用いられる研削盤のことです。砥石の軸が自由に旋回できるため、フライス・エンドミル・ドリルなどの工具を1回のチャッキングにて研削できます。また工具が摩耗した際の再研磨に用いられることもあるでしょう。
- CNCジグ研削盤(ジググラインダー)
1ミクロン以下の高い精度で穴の内面を仕上げることができる超精密研削盤のことです。自由に砥石の軸を動かすことで、丸穴以外に角穴・異形穴の内面であっても精密な仕上げができます。同じような機械にジグボーラーも。
- CNCロール研削盤
大型の円筒ワークを研削する際に用いられる大型CNC研削盤のことです。タービンや発電用の大型シャフトなどの特殊な部品を研削するときに用いられることが多いでしょう。
- CNC万能研削盤
自由に砥石の軸・テーブルを旋回させることが可能な多機能型の研削盤のことです。円筒研削以外にも、テーパー研削や内面研削など多種多様な研削で用いられます。
- CNCプロファイル研削盤
ならい研削に用いられている研削盤のことです。実物だけでなく、模型などを光学測定でトレースを行いながら研削を実施します。金型の精密部品をはじめ、複雑な微細な部品なども高精度で仕上げることができるでしょう。
グラインディングセンタ
マシニングセンタを基本としつつ、CNC研削盤の機能をまとめた複合機のことです。従来のマシニングセンタの切削加工だけでなく、砥石を活用した研削加工ができるでしょう。1回の段取りだけで、加工から仕上げまで行えます。円筒・内面・テーパー研削・カム研削など様々な研削加工に対応可能で、自動化装置も搭載しています。
放電加工機
電気のエネルギーを熱に変換し、金属を溶かす除去加工の一つです。電気を通す金属であれば、どんな金属であっても加工することができます。切削加工では難しいと言われている難削材の微細加工にも対応可能。高精度が必要とされる金型加工や半導体・自動車などの精密部品の加工などで用いられています。ただ切削加工よりも加工時間を要するので、NC放電加工機を用いた無人運転が行われることも。
放電加工(EDM)の種類
- 型彫り放電加工
前もって型が彫られた電極を用いて、形を転写する方法のことです。加工液の中で電極をワークに近づけ、放電し、電極のNC制御で3次元の複雑な立体加工に対応できます。規格品の電極を動かしながら成型する「創成放電加工機」、グラファイト電極を加工する「グラファイト加工機」などの種類があります。
- ワイヤ放電加工
ワイヤ状の細い電極を用いて、糸ノコのような感じで金属を切断しながら加工することです。加工液の中にワークを沈め、電極を近づけて放電します。電極は直径0.1ミリほどのタングステン・銅の素材で、ワークを切断。WEDMとも呼ばれ、加工にはNCワイヤ放電加工機が用いられることが多いでしょう。
- 細穴放電加工
棒状の電極を用いて、金属に穴をあける加工のことです。加工液の中にワークを沈め、銅や真鍮などの素材の工具を近づけて放電を行います。φ0.1ミリ以下の細長い穴をあけることも可能で、金型のエア抜き穴・精密ノズルの細穴などの加工にて用いられるでしょう。通常の穴あけ加工よりも、バリの発生を抑えることが可能です。NC細穴放電加工機が用いられるケースがほとんどです。
放電加工(EDM)の応用「プラズマ加工」
放電加工のひとつで、放電したことで発生したエネルギーを噴射し、ワークの切断を行う加工のことです。電気の通らない素材でも加工できるので、合金やステンレス、鋼板などの素材の切断にも活用されています。レーザー加工よりもコストを抑え、切断面の精度も高い成果が得られやすいでしょう。
金型製作の品質向上にはCAD/CAMが必須
金型製作に使用する設備は様々ですが、品質向上に欠かせないのは「CAD/CAM」です。CAD/CAMは、コンピューター上で設計や製図ができるソフトウェアです。金型製作に導入することで、設計や加工にかかる時間を短縮できるほか、ソフトウェアによる設計の統一化により、ミスが起こりづらくなり、金型の品質を向上することができます。
また、設計変更の要望があった場合に即応できるのも、コンピューターを用いるCAD/CAMならではの強みです。ただし、CAD/CAMには様々な種類があるので、金型の設計に適した製品を選ぶ必要があります。
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