金型製作を依頼して使用するにあたり、どんな工程が必要なのでしょうか。ここでは金型製作の事前検討から依頼、検収、維持管理、修理・改造を経て廃棄まで、各工程について詳しく説明します。
金型製作には高額な費用がかかるため、製作を依頼する前に「金型を本当に必要としているか」「標準品の代替は不可能か」などをしっかりと検討する必要があります。新製品の開発では個性やデザインを重視するあまり新しい金型を必要としがちですが、高価な金型を本当に製作する必要があるのか見極めることが大切です。
金型製作を決定したら、金型の構造と材質を検討します。金型は使用する製品の製造から製造中止、中止後の製品メンテナンス時まで長く使用するものです。そのため構造や材質には十分な検討が必要。
とくに強度を確保するための材質選びでは製造から中止後のメンテナンスまでの総数量・金型ひとつあたりの取り数・使用する成型機の金型構造などを考慮して決定します。
また、金型を用いた大量生産や長期間生産が予想される場合、2型や3型を製作する可能性があります。そのため、コストや品質、生産性などを総合的に判断すべきです。
なお、製作する金型の大きさや精度、複雑さなどを踏まえたうえで構造・材質を含めた仕様を決定します。
仕様が決定したら、信頼できる金型製造業者に見積もり依頼をします。製作したい金型の大きさや材質、精密などによって製作の依頼が可能な業者が異なるため注意しましょう。信頼できる業者選びの参考として、金型製造における技術力や専門知識の有無、製造実績の豊富さなどを確認すると良いでしょう。
なお、金型に要求する精度によって加工費が大きく異なります。業者が提示した金型製作費が妥当かどうか判断するために、切削加工や研磨加工、放電加工、仕上げ加工といった工程別の費用を見積書で確認しましょう。
見積書が提示されたら、価格の妥当性を判断します。金型の品質や寿命などの仕様確認も忘れないようにしましょう。
価格の妥当性に迷う場合は、過去に製作した類似金型との価格比較がおすすめです。ただし原材料の価格変動や加工レートなどを考慮する必要があります。
また、見積書では適切な加工方法や段取り短縮、金型標準化などの技術的な配慮があるかを確認します。部品価格も含めた総合的な評価を行い、信頼できる業者に依頼しましょう。
見積書を確認し依頼を決定したら、注文書を作成して発注を行います。注文書には図面や仕様、そのほかの発注条件などを明記しましょう。設計の完成度を高め、後になって変更や修正のないようにしておきます。見積依頼後に仕様変更をした場合は価格も変動するため注意しましょう。
また、発注後に図面変更を行う場合は図面番号や金型管理番号、部品番号などの周知が大切。価格が変動する場合にはその都度見積書を作成してもらいます。
なお、製作にかかる期間の目安は技術検討からトライ調整を経て仮測定を行うまでに19日~55.5日(60トン級~300トン級)ほどかかります。ただし金型の大きさや難易度、製作業者の設備能力などにより大きく異なる場合があります。
量産するために使用する機会と材料を使って試作を行います。試作の立会い(トライショット)には金型設計者や製品設計者の立会いを求め、初回完成部品をもとにした検査を実施します。なお、品質の変化確認のため、製造に必要な時間や温度、そのほかの条件などを記録しておきます。
検査では金型の実測検査や初回製品の寸法、できばえなどをチェックしましょう。とくにできばえに関しては後々のトラブルを防ぐため、限度見本を作成しておきます。
初回品の受入検査によって合否を確認し、検収伝票処理を行います。資産管理が必要な段階のため、経理担当者に確認しておきましょう。
製作した金型は成型業者や下請け企業に依頼をして部品製造を行うケースが多いでしょう。金型を貸与することになるため、貸与契約を結んでおきましょう。金型は高額な資産となりますから、権利義務関係をはっきりさせておくことが重要です。とくに目的外使用の禁止は明確にしておきましょう。
金型を貸与した業者や企業に対して決算期ごとの金型確認書提出を求め、金型が適切に保管されているかを確認します。金型は衝撃により破損したり、湿気によって塵埃などのよりさびが発生する可能性があります。そのため保管場所は適切な広さと強度のある場所を選びます。また、スムーズな生産維持のため、使用後の防錆処理を必ず実施します。
金型には寿命があるため、これまでにどのくらいの使用実績があるかを把握しておく必要があります。金型のショット数の管理や修理・改造の履歴、修理やメンテナンスの時期と内容を確認しましょう。使用実績を把握できていれば、部品の製造を継続する場合に新しい金型が必要かメンテナンスで対応できるかの判断もできます。
金型は消耗品ですから、使用実績を重ねるほど摩耗や破損のリスクが高くなります。摩耗や破損が生じると本来の品質を確保できなくなりますから、修理を行うことが大切です。あお、修理の費用負担については購買・調達担当者が立ち会って協議決定します。
また、部品の仕様変更や合理化、貸与先の要望によって金型の改造が求められることもあります。その場合も費用負担について事前に決定したうえで金型製作業者へ改造を依頼しましょう。
金型を使った製品製造の依頼先を変更したい場合は、可能な限り早いタイミングで説明し、貸与している金型の返却を求めます。また、製造している部品の生産終了の場合にも貸与金型の返却を求めましょう。とくに部品の製造中止時期が決定していない場合、成型企業などで金型が放置されてしまう可能性もあるため注意が必要です。
金型を廃棄するのは、部品の生産終了時や設計変更をしたことによる使用不能、摩耗や破損などによる使用不能の場合などです。部品の生産が終了した場合はメンテナンスの補修用部品としていくつか確保しておき、残りは廃棄手続きを行います。手続きは経理部門と共に行いましょう。
製作した金型を使って高い生産性を確保し利益を出すためには、金型の経済的な製作や寿命までの有効活用が大切。また保管や使用管理を徹底し、修理の機会を減らすことも重要です。とくに使用実績の管理に関しては委託先に任せがちですが、貸与した金型の使用実績を把握し寿命のタイミングを理解しておくと良いでしょう。
さらに製作した金型は業者や下請け企業へ貸与する可能性が高いことから、権利義務関係を明確にした貸与契約を結ぶことを忘れてはなりません。金型は高額な資産となるため、適切な管理を怠らないようにしましょう。
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